2009年11月05日

「パリところどころ」

11月の上映会(11/5〜9・14)は、「パリところどころ」をお届けします。
PARIS VU PAR/65年/フランス/35ミリ/カラー/97分
第1話「サンドニ街」監督:ジャン=ダニエル・ポレ 
第2話「北駅」監督:ジャン・ルーシュ 
第3話「サンジェルマン・デ・プレ」監督:ジャン・ドゥーシェ 
第4話「エトワール広場」監督:エリック・ロメール 
第5話「モンパルナスとルヴァロワ」監督:ジャン=リュック・ゴダール 
第6話「ラ・ミュエット」監督:クロード・シャブロル
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公式サイト
第1話「サンドニ街」貧乏暮らしの下宿に、初めて娼婦を招き入れた気弱な青年。ところが、おしゃべりに講じたり、夕飯を作ってあげたりと、完全に彼女にペースを握られ、なかなかことに及べず…。
第2話「北駅」共同生活を始めた若いカップル。いつか落ち着いた家庭を持ちたいと夢見る女。出勤前のある朝、忙しさの中で彼と口喧嘩をし家を飛び出すと、身なりを整えた若い紳士と出くわし、いきなり求婚を迫られるのだが…。
第3話「サンジェルマン・デ・プレ」知り合った男の眺めのいいアパートで朝を迎えたカトリーヌだったが、起き抜けにも関わらず、外交官の父に会いに行く飛行機に遅れるという彼にそそくさとアパートを追い出され、しかたなく学校へ向かうと…。
第4話「エトワール広場」高級紳士服店員のジャン=マルクは、その日、地下鉄で女性に足を踏まれて靴を汚され、工事中の舗道脇では泥を跳ねられ、よろよろ歩く男には因縁をつけられ、挙げ句の果てには持っていた傘を掴まれたまま気絶され…。
第5話「モンパルナスとルヴァロワ」浮気娘のモニカは、二股の男達に同時に速達を投函する。中身の間違えに気付いた彼女は、彫刻家の彼に説明に行くが飽きれられて追い出され、今度は、もう一方の修理工の彼を訪ねるが…。
第6話「ラ・ミュエット」高級住宅街16区のとある邸宅。両親の口げんかに悩まされ嫌気のさしていた少年は、耳栓で平静に生活する術を身につける。ある時、いつもの口げんかがいがみ合いになり母親が階段から滑り落ちてしまうのだが…。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年10月01日

「トウキョウソナタ」

10月の上映会(10/1〜6)は、「トウキョウソナタ」をお届けします。
08年/日本・オランダ・香港/35ミリ/カラー/119分
監督:黒沢清 出演:香川照之 小泉今日子 小柳友 井之脇海 井川遥 津田寛治 児嶋一哉 役所広司他
08年カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞受賞作品
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公式サイト
●自分が勤める大企業の総務部ごと中国大連の企業に委託されることが決定し、あっけなくリストラに遭う佐々木家の主・竜平。それを専業主婦の妻・恵に言えない彼は、毎朝、出勤のポーズでハローワーク通い。大学生の長男はバイトに明け暮れ家に帰らないことも多く、果てはアメリカ軍に入隊し平和のために奉仕するという。次男は学校で教師と衝突してシカトされ、興味を持っていたピアノを習うために給食費をくすね、こっそりと音楽教室へ通っている…。
それぞれが隠し事をしながら、お互いにその核心に触れないようにして暮らしている家族4人のかたち。リストラ、就職難、学校の問題、そして戦争。そこには、混沌として閉塞感が漂う世界の状況とも無縁ではない現代日本の家族の日常が横たわっています。監督は、その姿を静謐で美しいカメラワークと極力音を排した作風により劇のような虚構性をもって描き出し、その家族の悲劇性と滑稽さを際立たせます。家族それぞれが隠している秘密の行く末で破綻し、その後、何かを求めてもう一度家に戻って来る時、父・竜平と母・恵に見守られた次男が音楽学校の受験会場で弾くドビュッシーの「月の光」は、全てを浄化し、新たな家族の明日さえ予感させます。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年09月17日

「リアリズムの宿」ワンドリンクレイトショー

9月のワンドリンクレイトショー(9/17〜22)は、「リアリズムの宿」をお届けします。
2003年/日本/35ミリ/カラー/83分 
原作:つげ義春 監督:山下敦弘 出演:長塚圭史 山本浩司 尾野真千子他 音楽:くるり
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公式サイト
●冬のある日、駆け出しの映画監督木下と脚本家坪井は、共通の友人である俳優の船木に誘われ、東京を離れて旅に出ることに。ところが肝心の船木は朝寝坊。顔見知り程度でしかない2人が仕方なく訪れたのは鳥取のとある温泉街。意味もなく日本海を眺めていた2人は目の前を流れていく女性の下着を目にする。不思議に思っていると、若い女性が裸同然で走ってきた。何を思ったか、寒空の下、泳いでいると服も荷物も波にさらわれてしまったという。こんな風にして、なんとなく、2人の男と1人の女の旅が始まった…。
「劇的な要素のかけらもない男2人の旅」これが実に笑わせます。監督は、つげ義春の旅ものと呼ばれる2作品「リアリズムの宿」「会津の釣り宿」を大胆に脚色し、面識のない男2人が醸し出す気まずい空気の中に、そして道中で関わり合う人々との僅かなズレの間に、誰にでも身に覚えのある苦笑いなエピソードを滑り込ませ、言葉やしぐさだけでなく沈黙やリアクションでくすくす笑いを誘います。終止、朴訥とした台詞のおとなしい芝居が続きますが、時々挟み込まれる広角レンズで捉えた冬景色に俳優を配した画面はとても美しく、この平坦な旅にコントラストを与えます。旅の始まりを予感させる冒頭の楽曲を始め、控えめだが心に残る”くるり”の音楽も、このロードムービーを静かに盛り上げます。
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2009年09月03日

「胡同(フートン)の理髪師 」

9月の上映会(9/3〜8)は、「胡同(フートン)の理髪師 」をお届けします。
剃頭匠/'06年/中国/35ミリ/カラー/105分
監督:ハスチョロー 出演:チン・クイ チャン・ヤオシン ワン・ホンタ ワン・シャン他
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予告編
●北京の旧城内にあり古い家屋が建ち並ぶ胡同。そこに、93歳の今も出張理髪師を営むひとり暮らしの老人チンさんは住んでいる。毎朝同じ時間に起床、使い慣れた古時計を5分早めることから彼の一日は始まる。入歯をつけ、髪を梳かし、支度を済ませると、3輪自転車で出勤するチン老人。街は、折しも北京オリンピック開催に向けた区画整備の真最中。立ち退きを迫られる古い街並のように、チンさんも、やがてくるその日に備え、黙々と準備を始めるのだが…。
老理髪師の一日を丹念に描写するこの映画は、まるでドキュメンタリー作品のように描写されています。それもそのはず、主役の老理髪師チンさんを演じるのは、実際に93歳の現役理髪師で演技未経験のチン・クイさん本人なのです。ひげ剃りや散髪の場面は勿論、映画の多くのシーンは、チンさんの実生活をそのまま映しています。高度成長著しい街の変化や若い世代の考え方に戸惑いながらも、自分の生き方を貫く老理髪師の姿は、80年以上変らぬ毎日を送ってきた理髪師チンさん自身でもあります。そして、ここに映る彼の姿は、やがて消えてしまうであろう胡同の風景とともに、お金やモノでは満たすことのできない”心の豊かさ”を、見るものに気付かせてくれます。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年08月13日

「ペルセポリス」

8月の上映会(8/13〜18)は、イラン出身でパリ在住のマルジャン・サトラピの半自伝的グラフィック・ノベルを、自ら監督した長編アニメ「ペルセポリス」をお届けします。
PERSEPOLIS/2007年/フランス/35ミリ/モノクローム、一部カラー/95分 
原作・監督:マルジャン・サトラピ 声の出演:キアラ・マストロヤンニ カトリーヌ・ドヌーヴ ダニエル・ダリュー シモン・アブカリアン ガブリエル・ロペス フランソワ・ジェローム他
'07カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 出品審査員賞受賞作品
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英語版 公式サイト(こちらでは、監督のインタヴューも見られます。)
●1978年、テヘラン。9歳のマルジはブルース・リーが大好きな女の子。パパとママ、大好きなおばあちゃんに囲まれ幸せに暮らしていた。そんなある日、イラン革命が起きる。反政府主義者として投獄されていた父の兄アヌーシュ伯父さんも戻って来た。伯父さんは、" 知ることが大切 "と、好奇心旺盛なマルジに色々なことを教えてくれる。しかし、新イスラム共和国樹立に浮かれる日々も束の間、解放されたはずの元反政府主義者たちは、新政府により次々と投獄され、アヌーシュ伯父さんも逮捕されてしまう。学校は男女別々、女子のヴェール着用など、前政権以上に自由は奪われ、翌年にはイラン・イラク戦争も勃発。マルジの将来を案じた両親は、彼女をウィーンに留学させる…。
イラン出身、パリ在住のイラストレーター、マルジャン・サトラピ自身による自伝的同名マンガの映画化である本作は、混迷のイランで成長するマルジの半生と女性3代に渡る母娘の愛情を、涙と笑いを散りばめながら描いた作品です。なかでも祖母の存在は特に大きく、「常に公明正大であれ」、「恐れが人に良心を失わせる、恐れが人を卑怯にもする」など、マルジを常に勇気づけ優しく導きます。原画の単純な線を生かした作風は、激動の時代を監督独自の視点で描きながら、見る側の創造力をかき立てます。アニメーション独特の動きや繊細な装飾による心象風景の表現は、マルジの感情の起伏を表現し、どこにいても自分らしい生き方を模索するひとりの少女を鮮やかに息づかせます。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年07月09日

「ヴィットリオ広場のオーケストラ」とコンサート帰りにローマのトラットリアで

7月の上映会(7/9〜14)は、希望と幸福を奏でる多国籍オーケストラ誕生のドキュメンタリー「ヴィットリオ広場のオーケストラ」をお届けします。
L'Orchestra Di Piazza Vittorio/2006年/イタリア/35ミリ/カラー/100分 
監督:アゴスティーノ・フェッレンテ 音楽:ヴィットリオ広場のオーケストラ
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●ローマ旧市街のヴィットリオ広場周辺には60以上の民族からなる移民達が暮らしている。急速に街が変化する中、イタリア屈指の古く美しい映画館「チネマ・アポロ」も閉館を迫られていた。そんな時、多様な住民達の相互理解のため、そして映画館の有効な再生利用のため、ピアニストのマリオと映画監督アゴスティーノは立ち上がる。2人は、地区の多様な民族からの音楽家達によるオーケストラを組織し、運動を押し進める象徴的な存在を作ろうと計画する。演奏者達の発掘、活動資金や稽古場の確保、宗教や考え方の違うメンバー間のゴタゴタなどなど、多くの困難に直面しながら、5年間という歳月を乗り越え、みんなの思いはついにステージに結実。その懐かしくも新しい音楽は、ローマっ子を魔術的な感動に包み込む。
映画は、異なる国から来た異なる音楽の演奏家達によるオーケストラ結成の現場で、音楽性だけに留まらない様々な苦難を映しながら、故郷を離れ幸福を求める人々の生活を浮き彫りにします。多国籍の音楽家達が共に奏でる音楽は、もはや単なるエスニックミュージックでは捉えきれず、このオーケストラが共存の道しるべとして、 "多様性" に声と肉体を与えることに成功したことを物語っています。画面に映る観衆の興奮と同様、この音楽は、ことの成り行きを目撃した私達の心を強く揺さぶります。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年06月11日

「パッチギ!」と朝鮮家庭料理のフルコース

6月の上映会(6/4〜8+6/13)は、「パッチギ!」をお届けします。
<十条国際音楽祭+東京朝鮮中高級学校文化祭応援企画>
2004年/日本/35ミリ/カラー/119分 
監督: 井筒和幸 主演:塩谷瞬 高岡蒼佑 沢尻エリカ 楊原京子 尾上寛之 真木よう子 小出恵介 波岡一喜 オダギリジョー 光石研 余貴美子 笹野高史 ケンドーコバヤシ他
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●GS人気が絶頂だった1968年京都。府立東高校2年生の松山康介と親友の紀男は、日頃から喧嘩の絶えない朝鮮高校に親善サッカーの試合を申し込みに行く羽目になる。恐る恐る訪ねた校内をうろうろする2人。ブラスバンドの音色に誘われるまま音楽室に辿り着いた康介は、そこでフルートを吹くキョンジャに一目惚れ。しかし、キョンジャは朝鮮高校の番長アンソンの妹だった。キョンジャに近づきたくてギターを覚え、彼女が奏でていた歌「イムジン河」のメロディーを口ずさみ、朝鮮語も学ぼうとする康介。康介は「イムジン河」をギターで弾くために、フォークバンドを結成しようと親友の紀男を誘うのだが…。
主人公の府立高校生康介と朝鮮高校生キョンジャの恋愛が、単純なラブストーリーではないことは、一人の朝鮮高校生の葬式で露呈する二人が背負う二国間の歴史的、政治的な "溝" のエピソードからも明らかです。このテーマは、ザ・フォーク・クルセダーズの伝説的名曲「イムジン河」を通じて全篇に象徴的に扱われ、見る者に様々な想いを巡らせます。前途有望な若手俳優陣と脇を固めるベテラン達の熱演、思わず顔をしかめるほど激しい喧嘩のシーンやスピード感溢れるエピソードが繰り出す笑いなど、映画的躍動感と社会性を見事に融合させた心振るわすエンターテインメントをご堪能下さい。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年05月09日

「歩いても 歩いても」と劇中のレシピそのままに

5月の上映会(5/14〜5/19)は、「歩いても 歩いても」をお届けします。
2007年/日本/35ミリ/カラー/114分 
監督・原作・脚本・編集:是枝裕和 音楽:ゴンチチ 
主演:阿部寛 夏川結衣 高橋和也 田中祥平 樹木希林 原田芳雄 YOU 横山あつし 寺島進 加藤治子他
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公式サイト
●夏の終わり、良多は15年前に他界した兄の命日のため、妻と息子を連れて実家を訪れた。開業医だった父とそりの合わない良多は、失業中のこともあり、久々の帰郷も気が重い。明るい姉の一家も来て、老いた両親の家には久しぶりに笑い声が響く。姉たちと楽しく語らいながら料理の準備に余念がない母。一方、開業医を引退後も、相変わらず家長としての威厳にこだわり、皆の会話に加わらない父。昔使っていた大きな座卓を持ちだそうと探しに行った兄の部屋は今もそのままに。久しぶりの実家で掘り起こす幼少の頃の品々とその想い出。そして、大勢での食卓を囲んだ後、良多は家族と母を連れ、兄の墓参りに出かける。その帰り道、良多は、母から紋白蝶の話しを聞かされる…。
兄弟の命日に集まった家族の1日を描くこの作品には、たいした事件は起きません。そこに集まった家族とそこでの会話が、生き生きとした家族の"今"を映し出しているのです。親として、子として、あるいは個人として、それぞれの発言には、今考えている想いや伝えたいものがそっと見え隠れしています。そんな中、溺れた子供を助け、その命と引き換えに亡くなった息子を悔やむ母の漏らす言葉は、あまりに辛辣でドキリとさせられます。作品と寄り添うように流れるゴンチチによるメロディーも絶妙。優しさと思いやり、そしてそれ故の苛立ちなど、まさにある家族の一時を感じさせる静かな作品です。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年04月20日

「ヨコハマメリー」ワンドリンクレイトショー

G.W.のワンドリンクレイトショー(5/1〜5/6)は、〜白塗りの仮面をつけ、ある生き方を貫いた老女の物語〜 ドキュメンタリー映画の「ヨコハマメリー」をお届けします。
2005年/日本/35ミリ/カラー/92分 
監督・構成:中村高寛 主演:永登元次郎 五大路子 杉山義法 清水節子 広岡敬一 団鬼六 山崎洋子 大野慶人他
文化庁映画賞文化記録映画優秀賞
横浜文化賞文化・芸術奨励賞
神奈川文化賞未来賞
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●かつて、顔を白く塗り貴族のようなドレスに身を包んだ老女が、ひっそりと横浜の街角に立っていた。「ハマのメリーさん」人は彼女をそう呼んだ。名前や年齢も明かさず、戦後50年間、進駐軍相手の娼婦としての生き方を貫いた女。美人娼婦として名を馳せた、その気品ある立ち振る舞いは、いつしか横浜の街の風景の一部ともなっていった。ところが、1995年冬、メリーさんは忽然と姿を消し、いつしか彼女の噂はヨコハマの伝説となっていく。そんなメリーさんを温かく見守り続けていた人達の一人に、癌を患い余命いくばくもないシャンソン歌手の永登元次郎さんもいた。メリーさんとの想い出を語るうちに、元次郎さんは、ある一つの思いを募らせていく…。
監督は、メリーさんが消えた後の横浜でインタビューを始め、5年の歳月をかけてこの映画を完成させました。本作に登場するのは、永登元次郎さんをはじめとするメリーさんと親交の深かった人々や、彼女を暖かく見守ってきた人々。映画は、彼らへのインタビュー、当時を物語る記録写真、取材等を手がかりに、「メリーさん」とは何だったのか、彼女が愛し離れなかった「横浜」とは何だったのかを検証し、浮き彫りにしていきます。こうして横浜の今と昔を往復しながら、メリーさんを介して見えてくるものは、市井の人々の営みや感情、人生の機微であり、いつの時代も変わらない人と人を結ぶ普遍的な愛と優しさです。横浜を舞台とする心温まるドキュメンタリーを是非、ご堪能下さい。

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<5/2(土)作品上映後、中村高寛監督に講演をしていただきました。>
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2009年03月19日

「幸福(しあわせ)」とフレンチスタイルの合いがけ

4月の上映会(4/2〜4/7)は、アニエス・ヴァルダ監督の「幸福(しあわせ)」をお届けします。
Le Bonheure/1964年/フランス/35ミリ/カラー/80分 
監督:アニエス・ヴァルダ 主演:ジャン=クロード・ドルオ クレール・ドルオ ドルオ家の子ども達 マリー=フランス・ボワイエ他
1964年ルイ・デリュック賞
1965年ベルリン映画祭銀熊賞
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"Le bonheure"予告編
●フランソアは、叔父の建具屋で職人として働く若い夫。その美しく従順な妻テレーズは、洋裁で家計を助けている。2人には幼い子ども達もおり、慎ましくも幸せ一杯の4人家族である。週末に、会社の車を借りて郊外の森へピクニックに出かけるのが家族の習慣だ。ある日、フランソアは、出張で訪れた街の郵便局で、局員のエミリーと言葉を交わす。ふとしたことから会話が弾み、フランソアはエミリーをカフェに誘う。意気投合し、次回は彼女の部屋で会うことを互いに約束する2人。いつしか2人は、出張の度に彼女の部屋で会う関係となる。エミリーは自由な女で、フランソアに不倫の罪悪感を感じさせないが、同時に2人の女を愛している自分に悩んでいたフランソアは、子ども達が昼寝するピクニックの森で、妻テレーズに、それを打ち明けるのだが…。
柔らかく包み込むような空気で溢れる週末の森の描写や、実際の家族4人を主役に起用し、幸福な家族の姿を生き生きと描く演出は、繰り返されるモーツァルトのクラリネット五重奏曲とも相まって、美しく平和な情景を映し出します。しかし、その美しく、且つ淡々とした平和の描写は、後に展開されるアクシデントと出会うとき、そこに、より大きなコントラストさえ浮かび上がらせます。通常は黒を用いる暗転に、黄、青、赤、緑等を用いたり、ストーリーと関連づけるように映し出される街の外壁やポスター。シーン自体が切り取った静止画のようでもあり、さらに、そこに映画独特の動きも加える構図や手法からは、写真家としても活躍していたA・ヴァルダ監督のユニークで実験的側面も伺えます。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年03月02日

「しとやかな獣」と昭和の団地の食卓

3月の上映会(3/12〜3/17)は、若尾文子主演「しとやかな獣」をお届けします。
1962年/日本 /35ミリ/カラー/96分 
監督:川島雄三 原作・脚本:新藤兼人 主演:若尾文子 伊藤雄之助 山岡久乃 川畑愛光 浜田ゆう子 小沢昭一 高松英郎 船越英二 ミヤコ蝶々他
フィルム・写真提供:角川映画
共催:コミュニティシネマ支援センター(財)国際文化交流推進協会(エース・ジャパン)
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●高度成長期に建設された高層アパートの一室に住む四人家族の前田家。娘を流行作家の妾にあてがい、作家の収入をむさぼらせ、一方、芸能プロダクションに勤める息子には、タレントのギャラを横領させ、一家は何不自由のない生活と着実な預金を楽しんでいる。最初の訪問となる息子の務める芸能プロ社長、女会計係、タレントの取り立てには、露骨な猿芝居で白を切り続け、客人が帰るやいなや、いけしゃあしゃあといつもの日常に戻る家族。第二の訪問者である娘をあてがわれている作家の苦情には、徹底的なおべんちゃら大会でそれを躱し、悪びれた様子もなく、更なる搾取を画策する一家。すると、息子と同じ芸能プロダクションに務める若尾文子扮する先の女会計係が、今度は1人で息子を訪ねてやって来る…。
アパートの内部と玄関先の階段だけが舞台となるこの密室劇は、ストーリーの軸となる横領の現場や色恋沙汰も一切見せず、登場人物の台詞だけで全てが進行します。戦後強いられた貧しさを悪とする女衒ばりの父、物腰は上品なものの、更に上をゆく程したたかな母。搾取と横領を正義とし、徹底的にドライな悪党一家の丁々発止の台詞のやりとりと行動は、乾いたユーモアさえ漂わせます。絶頂期の若尾演ずる幸枝を頂点としたしたたかな俗物達の競演はまさに圧巻。落ち行く者、のし上がる者が、独白しながら架空の階段を昇り降りする象徴的な場面、夕立の中、利用され社会的地位を逸した税務官が昇り詰め佇む唯一の屋上シーン等、トーンを一新する道具立て、更には、雅楽を利用した意外な選曲は、作品に見事なコントランスを創り出します。文字どおり、他に類を見ない川島雄三による日本映画の傑作。是非、お見逃しなく。
◎cinecafe sotoの上映会は、映画上映とその映画にちなんだお料理がセットになった上映会です。今回の限定プレートもお楽しみに!
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2009年02月01日

「わすれな歌」と歌謡ショーのタイ屋台料理

2月の上映会(2/12〜2/17)は、タイ映画の「わすれな歌」をお届けします。
MON・RAK TRANSISTOR/2002年/タイ/35ミリ/カラー/116分 
監督・脚本:ベンエーグ・ラッタナルアーン 主演:スパコン・ギッスワーン シリヤゴーン・プッカウェート プラシット・ウォンラックタイ他
2002年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品作品 2002年シアトル国際映画祭アジアン・トレードウインズ賞受賞
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●天真爛漫で歌うことが大好きな青年ペンは、地主の美しい娘サダウに夢中。周囲の妨害も何のその、猛烈なアタックが功を奏し、ようやくサダウの心を射止める。結婚、そしてサダウの妊娠と、幸福の絶頂の頃、ペンは徴兵に駆り出されてしまう。毎日のように愛する妻サダウに手紙を送るペン。ある日、訓練中のペンは、巡業に来た芸能事務所の歌手オーディションのポスターを見つける。優勝すれば、以前からの夢であったプロ歌手としてのデビュー、そして、もと通りサダウとも一緒に暮らせると、万感の思いで歌った自作の「わすれな歌」は、会場を大きな感動に包む。しかし、これがペンの波乱の人生の幕開け。徴兵を放り投げ、芸能事務所で下詰み生活を始めたところから、つらくて、長い、故郷への道をたどることになる…。
タイの演歌と言われるゆったりとしたリズムの「ルークトゥン歌謡」を随所に生かした田舎の描写や情緒豊かな演出は、タイの映画に触れることの少ない私達にノスタルジーさえ喚び起させ余りありますが、それとは対照に、波瀾万丈の人生を強いられるペンのドラマには、圧倒的なスピード感があり、想像を絶するほど波乱万丈に描かれています。芸能界のボスなど、各キャラクターの描き方もとても現代的で、随所に笑いも取り込まれており、タイの映画という括りでは捉えきれない不思議な魅力を持った作品です。原案は、60年代に旋風を巻き起こした伝説のポップ・シンガー、スラボン・ソムバットジャルーンの歌謡曲。「月が空を忘れないように、僕を忘れないで」という歌詞の通り、映画も、故郷の妻に想いを馳せるラブ・ストーリーに仕上がっています。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
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2008年12月31日

「はなればなれに」 nouvelle vagueにヌーベル・キュイズィーヌ

2009年1月の上映会(1/15〜1/20)は、J・L・ゴダール監督の「はなればなれに」をお送りします。
Bande à part/1964年/フランス/35ミリ/モノクローム/96分 
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール 音楽:ミシェル・ルグラン 主演:アンナ・カリーナ サミー・フレイ クロード・ブラッスール他
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公式サイト
●強奪計画の「下見」に、パリ郊外の屋敷へ向かうフランツとアルチュール。叔母が、脱税の現金をその屋敷に隠している話をしたのは、フランツと同じ英語学校に通う若い娘オディール。彼女は叔母ヴィクトリアの屋敷に下宿している。道中、街で初めてオディールを見かけたアルチュールは彼女に一目惚れ。英語学校に紛れ込み、授業中に大胆なラブレターまで渡す。ナイーブなオディールは、そんな大胆さに魅せられ、次第にアルチュールに惹かれていく。オディールをそそのかし、英語学校を抜け出した3人は、その後、現金強奪計画を立てに市内のカフェへ。自分が話してしまった現金の強奪計画が進んでいることに混乱し、また、フランツとアルチュール、どちらを選ぶべきかで悩むオディール。3人は、強奪計画を明後日と決定するが…。
遅れて来た観客のために、前半部分をレジュメする監督自身の人を食ったナレーション。3人が黙りこむゲームの場面は映画自体もサイレントに。まるで、ミュージカルのように踊り続ける3人。たった9分45秒で鑑賞したというアメリカの団体観光客を茶化し、3人でルーブルの館内を走り抜けるなど、古典的ギャング映画のストーリーに散りばめられたエピソードは、愉快で即興的な演出が冴えるヌーベルヴァーグ時代のゴダールの真骨頂です。この悲しくおかしい青春日記は、同時録音と全編ロケにより当時のパリの若者の行動や風俗を瑞々しく表現しつつ、その日常が垣間見せる思いがけない一瞬を見せてくれます。音楽のミシェル・ルグランは、当時製作中の「シェルブールの雨傘」の楽曲も劇中で披露するも、監督との共同作業は難航を極めたらしく、スタッフ紹介では、「これが最後の映画音楽!?」などと揶揄されているのも、ゴダール流のユーモアでしょうか?
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
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2008年11月26日

「ミリキタニの猫」とN.Y.風の"天ぷらうどん"

12月の上映会(12/4〜12/9)は、ドキュメンタリー映画「ミリキタニの猫」をお届けします。
THE CATS OF MIRIKITANI/2006年/アメリカ/35ミリ/カラー/74分 
監督:リンダ・ハッテンドーフ 登場人物:ジミー・ツトム・ミリキタニ ロジャー・シモムラ他
2006年トライベッカ映画祭観客賞 ポート・タウンゼント映画祭最優秀長編ドキュメンタリー賞 ホープ・アンド・ドリームス映画祭最優秀ドキュメンタリー賞 東京国際映画祭<日本映画・ある視点>部門最優秀作品賞他、多数受賞

公式ホームページ
●ニューヨーク、ソーホー街の軒先で、路上生活をしながら黙々と絵筆を動かす老人。猫の絵に惹かれカメラを向ける監督に、彼は、絵と交換に自身の記録撮影を依頼する。そして、その大半を絵を描くことで過ごす老人の日常を記録する映像は、猫だけでなく、その生涯の体験を描き、平和を訴える彼の姿を映し出していく。すると、すぐ近くで、あの惨事、「9.11 世界貿易センタービル崩壊」の瞬間が…。騒然とした周囲をよそに、いつもと同じように平然と絵筆を動かす日系人画家ジミー・ミリキタニ。有毒なガスが立ち昇るソーホー街から避難させようと、監督は、彼を自身のアパートに同居させる。生活をともにし、打ち解けた会話の中から、彼の波瀾万丈な反骨人生が浮かび上がってくる。
カリフォルニア生まれの日本人である彼は、母の故郷広島で育つが、軍国主義を逃れ18歳でアメリカに帰国。第二次大戦中は、3年半に渡り、日系人強制収容所の生活を余儀なくされる。その後は、アメリカ政府に抵抗し、自ら市民権を放棄。その時から、彼の反骨の人生が始まる。
かけがえのない友人を見守るかのように、ファインダー越しに暖かい視線を投げかける監督の愛情は、頑なに平和への想いを貫いてきたジミー・ミリキタニ氏の心を柔らかく解きほぐし、見ている私達にも幸福感を与えると同時に、自由や、平和の意味を問いかけさせてくれます。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
posted by Cinoche at 17:09 | Cinema

2008年11月01日

「フリーダ」

11月の上映会(11/6〜11/11)は、「フリーダ」をお届けします。
FRIDA/2002年/アメリカ/35ミリ/カラー/123分 
監督:ジュリー・テイモア 「アクロス・ザ・ユニバース」’07他
主演:サルマ・ハエック アルフレッド・モリナ ジェフリー・ラッシュ アントニオ・バンデラス他
2002年アカデミー賞作曲賞 同メイクアップ賞
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●メキシコ人の母とドイツ人の父のもと、4人姉妹の3女として生まれたフリーダ・カーロは、6歳で小児麻痺を患うが、天性の明るさで、幼い頃から多感な少女時代を過ごしていた。高校生になった彼女は、バスと路面電車の衝突事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う。 一命は取り留めたものの寝たきりの生活となってしまった彼女は、その頃から独学で絵を描き始める。近しい人物や自画像の表現に独創的な才能を開花させていった彼女は、度重なる手術にもめげず奇跡的な回復も見せてゆく。なんとか歩けるまでに回復していたフリーダは、画家になることを夢見て、民衆のための芸術を興すメキシコ壁画運動の中心的画家であったディエゴ・リベラに面会に行く。彼女の絵は認められ、その後、彼の教えを乞うようになり、その関係は、いつしか情熱的な愛情を育むのだが…。
映画は、「折れた背骨」、「断髪の自画像」など、フリーダが直面した人生上の困難や苦難を表現した絵画作品をオーヴァーラップさせ、その世界観を独特の映像で表現しています。主演のサルマ・ハエック(「デスペラード」「フロム・ダスク・ティル・ドーン」など)は、高校生から47歳で亡くなるまでのフリーダを体当たりで演技し、本作では製作も兼ねています。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。

< Frida KAHLO フリーダ・カーロ >('07〜'54)
メキシコで最も有名な画家の1人。メキシコとネイティブ・アメリカンの文化的な影響下で、自己の体験に基づく心の痛みを画題に、鮮やかな色彩による具象作品を制作。イサム・ノグチやレフ・トロツキーとの不倫など、その奔放な恋愛遍歴も有名。彼女の作品は、フランスのシュルレアリストたちに高く評価されたが、自身は空想ではなく現実を描いていると述べている。メキシコ共産党員でもあり、居室にスターリンの肖像を掲げて暮らしていた。
posted by Cinoche at 00:00 | Cinema

2008年10月09日

「19歳の地図」上映と柳町光男監督トークショー

「ホームービーデー」の翌日は、「19歳の地図」で、'79年当時のこの地域を振り返ります。
19歳の地図/1979年/プロダクション群狼/35ミリ/カラー/109分
脚本 ・監督:柳町光男 原作:中上健次 音楽:板橋文夫 主演:本間優二 蟹江敬三 沖山秀子 山谷初男ほか
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●地方から上京し、住み込みの新聞配達をしながら予備校に通うみつる。集金の度に怪訝な顔をされ、嫌われ無視されるみつるは、不満度を×で印した配達区域の住宅地図を作り、いたずら電話を重ね毒を吐く。そして、いつしかその不満は、社会全体へと向けられてゆく。ささやかな復讐を試みながらも、自身の無力を自覚し、虚栄を張りながら生きていく若者の焦燥感と閉塞感を、当時全くの新人俳優であった本間優二が好演しています。

◎この作品は、'79年当時、十条、赤羽、王子、滝野川周辺を主なロケ地として撮影されました。柳町監督には、撮影当時のこの地区でのロケについて、思い出話を語っていただく予定です。

=柳町光男監督= 
暴走族を追ったドキュメンタリー「ゴッド・スピード・ユー!BLACK EMPEROR」でデビュー。「十九歳の地図」(79)、「さらば愛しき大地」(82)カンヌ国際映画祭正式出品「火まつり」(90)等を製作。01年から3年間早稲田大学客員教授に就任。最新作の「カミュなんて知らない」(05)は、同年のカンヌ国際映画祭監督週間に正式出品、また第18回東京国際映画祭日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞。

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<10.19 作品上映後、柳町光男監督に講演をしていただきました。>
posted by Cinoche at 00:34 | Cinema

2008年09月19日

「アマチュア」とポーランドのロールキャベツ "ゴウォンプキ"

10月の上映会(10/2〜10/7)は、「アマチュア」をお届けします。
AMATOR/1979年/ポーランド/35ミリ/カラー/112分 
監督:クシシュトフ・キェシロフスキ 「トリコロール3部作」「ふたりのベロニカ」など
主演:イエルジー・スチュエル マウゴジャーダ・ジャブコウスカ他
モスクワ映画祭グランプリ グダニスク映画祭グランプリ
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●念願だった娘の誕生を機に、成長の記録を残そうと給与2ヶ月分でロシア製8ミリカメラを購入したフィリップ。撮影の趣味を買われ、勤務工場の記念式典の記録を命ぜられる。撮影に編集にと、娘や妻もそっちのけで映画製作にのめり込んでしまう彼は、妻の不信感を募らせる。妻の希望とは裏腹に、彼の作品はアマチュア映画祭で受賞し、業界の知人も得て、工場では映画倶楽部も組織。はれて会社公認の映画倶楽部長として新作を作り続け、ついには、工場の一労働者を追った短編作品がテレビ放映されるまでになるのだが、そのとき妻は…。
作者の意図に反し、被写体に危害を被らせてしまう可能性も持つドキュメンタリーの危うさを悟り、次第に自らの表現をフィクションの場に求めていったキェシロフスキ監督自身の疑問を投影した作品。実在の評論家や監督も実名で出演し、かつて、監督自身が完成することのできなかった障害を持つ労働者のドキュメンタリーを主人公の作品として、劇中に挿入しています。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
posted by Cinoche at 23:06 | Cinema

2008年08月26日

「SWEET SIXTEEN」

9月の上映会(9/11〜9/16)は、「SWEET SIXTEEN」をお届けします。
Sweet Sixteen/2002年/イギリス・ドイツ・スペイン/35ミリ/カラー/106分 監督:ケン・ローチ 脚本:ポール・ラヴァティ 主演:マーティン・コムストン ウィリアム・ルアン他 2002年カンヌ国際映画祭脚本賞受賞
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●母は服役中、その情夫は麻薬の売人。そんな家庭に育ったリアムは学校にも行かず、親友のピンボールとフラフラしている。味わったことのない家庭のぬくもりを夢みるリアムにとって、母と、そして、母に愛想を尽かして出て行った姉シャンテルとも、皆で一つ屋根の下に暮らすことが唯一の希望だった。ささやかなバンガローの頭金を稼ぐため、リアムとピンボールは母の情夫スタンの麻薬でひと儲けする計画を立てる。麻薬売買の胴元にも目をつけられるが、素人ながらがむしゃらに稼ぎ出すその勇気を見込まれ、より大きな取引も任される。念願の新居に出所した母を迎え、かつての夢が全て叶ったように思えたリアムではあったが、晴れて16歳の誕生日を迎える次の日、彼はある一線を超えてしまう。
06年「麦の穂をゆらす風」で、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したローチ監督は、社会問題への鋭い批評性を背景に、人間を愛する厳しくも優しい眼差で市井の人々にフォーカスをあててきました。本作でも、児童虐待、家族、ドラッグ等、様々な問題を扱いながら、過酷な現実を生き抜く純真な少年の心の叫びを描き出します。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
posted by Cinoche at 00:05 | Cinema

2008年07月31日

「僕の村は戦場だった」とロシア粥 "カーシャ"

8月の上映会(8/14〜8/19)は、「僕の村は戦場だった」をお届けします。
ИВАНОВО ДЕТСТВО/1962年/ロシア/35ミリ/モノクローム/94分 
監督:アンドレイ・タルコフスキー 主演:ニコライ・ブルリャーエフ ワレンチン・ズブコフ他
1962年ベネチア映画祭グランプリ サンフランシスコ映画祭最優秀映画賞
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●立ちこめていた霧も晴れ、森にはカッコーの声がこだまします。蝶は野原を舞い、野生の山羊が草を食みます。そんな平和な風景も束の間、少年は現実の悪夢に目を覚まします。対独戦争により両親と妹を失ったイワンは、憎しみに身を焦がし、パルチザンとして敵の占領地を偵察する危険な任務をこなしています。前線の将校たちも、彼を優秀な同士として迎えるものの、まだ年若い彼の身を案じ、同じ年頃の子ども達のように、後方へ戻り学校へ通うよう説得を続けますが、イワンはそれをかたくなに拒みます。ドイツ軍の攻撃が激しさを増す頃、イワンは敵の情勢を探る命がけの偵察役を強引に買って出ます。斥候に出たまま帰らなかった仲間の兵士の遺体がさらされる土手を横目に、イワンを乗せた小舟は、前線の沼地の闇に消えて行きます。
'59年のウラジーミル・ボゴモーロフのベストセラー「イワン」の映画化。前線の薄暗く陰気なシーンとは対照に、イワンの記憶にある平和な風景を、大胆なカメラワークと編集により詩情豊かに再現します。後に、「惑星ソラリス」「鏡」「ストーカー」など数々の名作を残すA・タルコフスキー監督の長編処女作。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
posted by Cinoche at 20:11 | Cinema