THE MATCH FACTORY GIRL/1990年/フィンランド/35ミリ/カラー/70分 監督:アキ・カウリスマキ 主演:カティ・オウティネン エリナ・サロエスコ・ニッカリ ヴェサ・ヴィエリッコ他

●冒頭、古びたマッチ工場の製造ラインが延々映ります。その工場で淡々と仕事をこなす少女イリスは、市電に乗って、食材を買って、家に帰るだけ。アパートには、イリスの稼ぎに頼る母と義父。ある晩、イリスはディスコに出かけます。次々と誘われる女性達をよそに、彼女は最後まで声をかけられず、足下には空瓶の山。給料日の帰り道、彼女は派手なドレスを衝動買いします。給料袋を待ち構えていた義父には「売春婦」と罵られたイリスでしたが、今度は、そのドレスを着てディスコへ。ドレスのおかげか否か、今度は男に誘われ、彼の家で一夜を過ごします。ルーティンの仕事をこなす彼女にも微かな笑みが…。やっと掴んだ幸福もつかの間、勝手に真実の愛を信じていたのは彼女だけ。その後は、めくるめく不幸に見舞われていきます。しかし、ある日、ついにイリスは、はっとするほどしたたかな反撃を試みます。
結果だけを淡々と描く作風は、イリスの犯行を、決して悪びれることなく、むしろすっきりとすがすがしくその至福の時を謳い上げて、独特のユーモアさえ感じさせます。俳優たちの台詞は極端に少なく、そして無表情、映しだされるものも最小限。そんな中、主人公の心中を代弁するかのような劇中の安っぽいロック歌謡の歌詞は、もう笑うしかない悲惨な状況を、ひときわ哀愁を込めて語ります。本作は、その短さもあって、まるで独特の語り口によってお話しを語る絵本やマンガのようでもあります。監督自ら、"負け犬三部作"と称する初期の3作品の中から、カウリスマキを一躍有名にした「マッチ工場の少女」を、是非、フィルムでご堪能下さい。
◎cinecafe sotoでは、いつものように、映画にちなんだお料理をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。